午後2時に始まる高石北斎の野望

ハロヲタのための24のガヴォット第2番イ長調 視神経午前2時  

卒業

でも、メンバー全員に発表する前に、カオリには先に言った。
何かやっぱり、結成前からずっと一緒に頑張ってきた仲というか、
二人の関係は、二人にしか分からない思いがあったりするから。

 確か『Mステ』の収録のあとだったと思うな。
自分の中で本番前とかもいろいろ考えながら時間が過ぎてた。
どうしようかな、直接言おうかな、
帰ってメールとかで言おうかな って悩んで…。
 結局、収録が終わってスタジオから家までの帰り道、
メールを打ちました。やっぱり帰ってからは、
それぞれのプライベートの時間だから、
それはなっちも邪魔したくないという思いがあったし。
帰り道、一時間ぐらいかけて、ずっとああ違うな、こうかなって悩んで。
だってそれを読んで、間違いなくカオリは何かを感じるわけで。
なっちもいままで卒業を見送ってきたから、
それを聞いたときの気持ちもわかるし…。
言うときのこう…前後の気持ちはそのとき初めて分かりました。
でもなっちもみんながバーっといるなかで聞く形しか知らない。
カオリが受ける衝撃を思ったら、きっとものすごいと思う。
だから家に帰ってからも、ずっと考えました。
おむ文面はできてたんだけど、でも何度何度も読み返したりして。
 送信のボタンを押す時はすごく、
心臓がドキドキ…押したら届くんだ… ドキドキ…って。

カオリからはすぐメールが返ってきた。
「なっち電話して」
って書いてあったから、なっちはすぐベランダに出て…。
そのとき隣に家族がいたのね。やっぱり自分の弱い部分ていうわけじゃないけど、
こういうのは聞かれたくないっていうのがあったんですね。
これは私とカオリのことだから。
それでベランダで話してました。外は暗い中。
カオリは、泣いてましたね。すごい泣いてて、まるで子供のように泣いてた。
そして動揺してた。なっちもその気持ち、動揺するのは分かる。
まさかって思うよね。
このタイミングで、みたいな。
ごめんね、ビックリさせちゃってっていう思いでいっぱいでした。
カオリは、泣きながら「え? え?」っていう感じだった。
戸惑ってて「え?え?」ってずっと言ってた。
でも、次の日早かったから、動揺しながらも自分で自分をすごい落ち着け
ようとしているのが分かった。
 すごく動揺しながらも、
「卒業までに、カオリに出来ることがあったら何でも言って」って。
自分が焦っている中でもカオリはそう言ってくれた。
なっちには、これまで
忘れられない瞬間がいっぱいあるけど、
このことも、この先忘れないことの一つだと思う。