酸とは
酸とか塩基とかいう言葉はTVや雑誌でもしょっちゅう使われているし
それこそ小中学校の教科書にも書いてあるかもしれない。
化学用語の中でも知られてる言葉なんだけど
これほど間違って使われてる用語も珍しいし
場合によっては危険な事態を招きそうな勘違いもある。
酸 という言葉と 塩基 という言葉
どちらも日本語で いわゆる反意語の関係にあるんだけど
酸 がわりかしポピュラーな割りに
塩基 はそれほど耳なじみがないかもしれない
塩基 という日本語のかわりに
アルカリ というアラビア語がよく使われているからだ
(しかも本来の意味からかなり曲解されて)
中学校などの教科書にはたいてい
アレニウスの定義 というのが載っていて
水溶液中で電離して水素イオンを出すものを酸という。
そして高校の教科書などには
ブレンステッドの定義 というのが載っていて
水素イオンを与えるものを酸という
しかし注意が必要なのは
この2つの定義は全然違う見方をしている ということ
アレニウスの定義は 物質にについて言っている のに対し
ブレンステッドの定義は化学反応における役割に対して言っている
だからブレンステッドの定義によれば
ある化学反応で酸として働いたものが
別の化学反応では塩基として働くこともある。
だから一般の人はアレニウスの定義で考えたほうがわかりやすい
ただここでいちばん注意しなくちゃならないのは
酸 という言葉と 酸性 という言葉の違い
これを混同すると非常にややこしいことになる。
酸性 というのは水溶液の性質のことで
すっぱい味がする とか
リトマス紙を赤くする とか
亜鉛や鉄などと反応して水素を発生する とかいうもの
実はこれがすべて水溶液中に存在する水素イオンのはたらきなので
水溶液中で電離して水素を発生するもの が酸なわけだ
だから酸が酸性を示すとは限らない
濃硫酸などはほとんど酸性を示さない
濃硫酸が危険なのは脱水作用とその際の発熱であって
酸性とは関係がない
化学物質の危険性にはそのほか
爆発性 可燃性 腐食性 化学毒性 などがあるが
いずれも酸性とはあまり関係がない
むしろ塩基性の物質のほうが腐食性をもつことが多い
酸の強さ と 酸性の強さ も全く別であって
強い酸 でも濃度が低ければ酸性は弱くなる。
はてなキーワードの 酸性 のとろに出ている解説は
3つとも 酸 の定義であって 酸性 の定義ではない
酸性 とは
水溶液中で水素イオンが水酸化物イオンより多い状態
である。
よく pHが7未満なら酸性 と思ってる人がいるが
これは25℃のときだけの話
pHは水素イオン濃度の逆対数だから
温度が変われば水のイオン積の値が変化するから中性のpHも変わる